ぶどう膜炎

ぶどう膜炎:ぶどう膜炎の位置

ぶどう膜とは、眼の部位である虹彩・毛様体・脈絡膜の総称で、これらの組織の一部あるいは全てに起こる炎症をぶどう膜炎といいます。

ぶどう膜炎について

ぶどう膜炎とは

ぶどう膜とは、眼の部位である虹彩・毛様体・脈絡膜の総称です。
これらの組織の一部あるいは全てに起こる炎症をぶどう膜炎といいます。

ぶどう膜は眼の組織の中で血管が豊富な組織です。血流が多く、炎症に関わる白血球やいろいろな微生物、抗原というタンパクが集まりやすい場所のため、炎症反応の起きやすい組織とされています。
ぶどう膜炎は眼科疾患の中で最も内科的要素が強い病気と言われています。正しい診断のためには詳細な経過観察が必要となります。

ぶどう膜炎が起こると、前房と硝子体という眼の中にある透明な部位に炎症性細胞が広がります。
自覚症状としては、一般的に、眼の赤み・痛み・視力低下・羞明感(まぶしく感じる)・霧視(かすんだように見える)・飛蚊症(蚊が飛んでいるように見える)などが現れます。このような症状を自覚したときは早めに眼科を受診しましょう。

ぶどう膜炎は目の中の病気なので「内眼炎」とも呼ばれています。
内科的な病気が外傷性のものと比べて治りにくいのと同じように、症状が数日から数週間で治ることは少なく、数ヶ月から数年と長期に渡る場合があります。また、病気や状態によっては持病として付き合っていかなければならないものもあります。このように、長期に渡って治療が必要な病気です。

眼の断面:ぶどう膜

眼の赤み・痛み・視力低下・羞明感(まぶしく感じる)・霧視(かすんだように見える)・飛蚊症(蚊が飛んでいるように見える)などの症状を自覚したときは早めに眼科を受診しましょう。

ぶどう膜炎の病因

ぶどう膜炎は病因によって外因性と内因性に分けられます。

1. 外因性ぶどう膜炎
外傷や手術によって、細菌やウイルスなどの病原体が直接眼の中に入ることで生じる状態を、外因性ぶどう膜炎といいます。また、悪性腫瘍も要因の一つになります。
2. 内因性ぶどう膜炎
内因性ぶどう膜炎には、病原体が血液を通して別の器官に移動して増えたり、神経線維を介して神経線維束を取り巻く細胞に達することで眼内に感染して発症するものと、病原体や自己組織が抗原となり免疫反応として生じるものとがあります。

また、症状が出る部分によって4つに分けることもできます。

  1. 前部ぶどう膜炎・・・虹彩炎・虹彩毛様体炎
  2. 中間部ぶどう膜炎・・・毛様体雇平部炎・周辺部ぶどう膜炎
  3. 後部ぶどう膜炎・・・脈絡膜炎・網脈絡膜炎
  4. 汎ぶどう膜炎・・・ベーチェット病・サルコイドーシス・原田病

炎症がどの部分で生じているかで分類したり、肉芽種性ぶどう膜炎(肉芽腫:炎症細胞が集まった病変のひとつ)か非肉芽種性ぶどう膜炎かで分類したりすると、原因疾患の診断につながりやすくなります。

日本の内因性ぶどう膜炎の原因はサルコイドーシス、フォークト-小柳-原田病(以下、原田病)、ベーチェット病が多く、これらを総称して「三大ぶどう膜炎」といわれていました。しかし近年、ベーチェット病の占める割合は減少傾向にあり、急性前部ぶどう膜炎や強膜炎が上位原因疾患となってきています。

また、さまざまな検査をしても疾患が分からないぶどう膜炎も全体の3割ほどあり、ぶどう膜炎と診断されても3人に1人は原因不明の場合があります。
このように、ぶどう膜炎は診断が難しい疾患の一つですが、原因が分かればより適切な治療を受けることができます。

ぶどう膜炎の症状

今回は三大ぶどう膜炎についてご説明します。

サルコイドーシス

サルコイドーシスは眼以外にも全身の多彩な臓器(肺、心臓、リンパ節、皮膚、骨、肝臓など)に肉芽腫病変ができる病気です。20~30歳代の若い女性と50代以降に発症することが多く、全体として女性が男性の約2倍の人数を占めています。

また、全体の約15%に眼の異常が現れます。角膜の後面に白い沈着物を伴ったり、虹彩に結節(腫瘍のようなもの)が生じたりします。硝子体にも混濁が認められ、雪球や数珠のような形の混濁がみられるのが特徴です。

サルコイドーシスとは、厚生省の特定疾患医療に指定されている病気です。
症状が長引いたり、再発を繰り返したりすると、他の眼疾患を合併して視力低下などの症状を引き起こすことがあります。
きちんと治療をすれば、他の疾患を併発するリスクは低くなります。

フォークト-小柳-原田病

原田病はメラノサイト(メラニンという皮膚や毛、眼の網膜に存在する黒色の色素を生成する色素細胞のこと)に対する各組織の色素細胞が自己免疫の作用によって破壊される病気です。日本人を含む東洋人に発症することが多く、白人に少ないという特徴を持っています。

眼には主に脈絡膜と網膜に症状が現れます。自覚症状としては、両眼の急激な視力低下、霞んで見えづらいなどの症状があります。

眼以外の症状としては、めまい・難聴・耳鳴り、倦怠感などが現れたり、髄膜炎を併発した際に激しい頭痛が起こったりします。このようにさまざまな症状が現れるため、診断には脊髄液の検査や聴力検査も重要になってきます。

炎症が強いと両眼に網膜剥離が起こってくる場合があるので、合併症にも注意が必要です。
回復期には、髪の毛が抜ける・白髪になる等の変化がみられます。また、皮膚の一部分が白くなったりもします。

ベーチェット病

ベーチェット病は、眼や全身の皮膚、粘膜に様々な症状が繰り返し起こる原因不明の全身疾患です。発症のピークは20歳ごろで、女性よりも男性がかかりやすいと言われています。

眼の症状に加えて、口内炎・皮膚症状・外陰部潰瘍などの皮膚に現れる4つの症状を主としています。さらに、血管・神経・消化器病変などにも変化が出る場合があり、非常に多彩な症状が見られます。こちらも厚生省の特定疾患医療に認定されている難病の一つです。

眼症状は、多くが両眼性のぶどう膜炎です。その他、眼底出血・視力低下などがあり、発作を繰り返すごとに重症化し、視力が低下していきます。最悪の場合、失明に近い状態に至る人も少なくありません。

ベーチェット病はいろいろな症状の組み合わせで診断されます。症状は一度に出てくるわけではなく、長い期間をかけて症状が揃うことで初めてベーチェット病と診断される場合もあります。ベーチェット病の疑いがある場合は、定期的な経過観察が重要になります。

高い頻度で起こる合併症は白内障や緑内障、網膜剥離です。合併症が起きると視機能が低下してしまうため、専門医による早めの治療が必要です。早期受診により、手術で視力が回復したり、視野異常の進行を最小限に抑えたりすることが可能になります。

ぶどう膜炎の治療方法

基本的には薬による内科的治療になります。また、点眼や眼の回りの組織に注射をする場合もあります。眼の奥の炎症が強い場合はステロイド薬や免疫抑制薬の全身投与が行われます。炎症を抑え、視力障害につながる合併症を予防することが一番の目的になります。

ステロイド薬の全身投与と聞くと、副作用が心配される傾向がありますが、症状にあわせて必要な量を適切に使用すれば大変効果の高い薬です。
ステロイド療法は症状の改善に伴い、徐々に量を減らしていくので、治療は長期的なものとなります。

自覚症状が改善したからといって、患者様の自己判断による急な薬の減量や中止は、症状の再発や、状態を長引かせたりする危険性があるため注意が必要です。

ぶどう膜炎は、最悪の場合失明に至ることもある病気です。見え方や症状に変化を感じたら必ず眼科を受診して下さい。

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