未熟児網膜症

未熟児網膜症:網膜の位置

網膜血管の成長が未熟なまま予定日よりも早く生まれた赤ちゃんは、網膜で血管が枝分かれしたり新たな血管が形成されたりと無秩序な発達を起こすことがあり、これを未熟児網膜症といいます。

未熟児網膜症について

未熟児網膜症とは

網膜

通常赤ちゃんの眼は妊娠3週目ごろから形成され始め、7週目頃には眼球の形が完成します。網膜(光を感じ取る組織)や視神経(光を脳に伝達する組織)もこの時期に形成されます。

その後16~17週目を過ぎると網膜に栄養を送る血管が発達し始め、視神経から眼底周辺部まで伸びていき、36週目頃に完成します。

しかし予定日よりも早く生まれた赤ちゃんは、まだ網膜血管の成長が未熟の状態で産まれてしまいます。その為網膜が酸欠状態となり、血管が酸素を補おうと成長を再開したとき、枝分かれしたり新たな血管が形成されたりと無秩序な発達を起こすことがあり、これを未熟児網膜症といいます。

網膜で無秩序な発達を起こした血管を新生血管といい、新生血管は非常にもろく破れやすいため、硝子体(眼の中を満たすゼリー状の組織)の中で出血を起こし瘢痕が生じたり、重い場合は新生血管が伸びていく際に網膜を強く引っ張ってしまうことにより網膜剥離を引き起こし、視力低下や失明に繋がる可能性もあります。

ひとこと

未熟児網膜症は主に在胎28週未満で生まれた赤ちゃんは高確率で起こり、出生体重が少ない赤ちゃんほどリスクが高まります。生後3~6週目ごろに発症すると言われています。

未熟児網膜症の分類と治療方法

未熟児網膜症には、主にゆっくり進行する「Ⅰ型」タイプと、急激に症状が進行する「Ⅱ型」タイプの2つに分類されます。

Ⅰ型

未熟児網膜症の多くは「Ⅰ型」タイプであり、自然に治る子もいます。「Ⅰ型」の中でも更に5段階に分けられ、段階によって治療方法が異なります。

1段階目であれば今後正常に血管が発達していく可能性があるため、治療せず定期的に眼底検査を行い経過観察となります。

2~3段階目に進んでしまうと新生血管が増殖を起こしてしまっており、視力に影響を与えてしまう恐れがあるため治療を検討します。

治療方法は主にレーザー治療(網膜光凝固術)を行います。レーザーで網膜の一部を焼き、新生血管の増殖を防ぎます。1度だけでなく、経過をみて繰り返し行います。

4~5段階目まで進んでしまうと網膜に出血が増大し網膜剥離を起こしてしまっている状態のため手術が必要となります。

強膜輪状締結術といって、強膜(眼球を覆う壁のような組織)に外側からベルトをぎゅっと巻きつけ、剥がれてしまっている部分の網膜を元に戻します。その状態で強膜を冷凍凝固することにより網膜の形状を元に戻します。

また、硝子体手術といって、直接硝子体内の出血や増殖組織を取り除き、変わりに硝子体内にガスなどを入れ、剥がれた網膜を元に戻す手術が必要になる場合もあります。

Ⅱ型

「Ⅱ型」は「Ⅰ型」とは異なり、急激に症状が進行し網膜剥離を引き起こしてしまう極めて危険性の高いタイプです。
低体重であるほど「Ⅱ型」であるリスクが高まります。

「Ⅱ型」と診断されたら早急に治療が必要となります。治療方法は「Ⅰ型」と同様、レーザー治療や手術を行います。

最後に

未熟児網膜症は自然に治る場合もありますが、早産で生まれた場合は近視や乱視といった屈折異常が出やすかったり、斜視といって両眼の視線が合わなかったりする合併症も起こしやすいので、医師と相談しながら定期検査を受けるようにしましょう。