レーシック(LASIK)

レーシック(LASIK)は角膜屈折矯正手術(視力矯正手術)の一種で、角膜の表面を薄くスライスしたフラップを作ってめくり、めくれた部分(角膜実質層)の一部を削ることで角膜のカーブの緩急を変えて遠視や近視・乱視を矯正します。

レーシックについて

レーシック(LASIK)とは

レーシック(LASIK)とは角膜屈折矯正手術(視力矯正手術)の一種です。

レーシックはマイクロケラトームと呼ばれる器具、又はレーザーを用いて角膜の表面を薄くスライスし、フラップ(ふた状のもの)を作り、めくります。

めくれた部分(角膜実質層)にエキシマレーザーを照射し、一部を削っていきます。削られた部分が薄くなるため、角膜のカーブの緩急が変わります。
この効果により遠視や近視・乱視が矯正されます。
その後、フラップを元に戻すと、フラップは自然にくっつきます。

フラップは時間経過とともに日常生活に問題ない強度に近づきますが、完全に元に戻ることはありません。強い外力(ボールが当ったりなどの衝撃)がかかるとフラップがずれる場合があります。
そのため激しい運動をする方には向いているとはいえません。

フラップを作らないPRKや、フラップを再生させることができるラセックと呼ばれる手術もあるので、特にスポーツ選手などはこちらを選ぶこともあります。

レーシックをするに当たって角膜に一定の厚さが必要になるため、角膜の厚さが薄い方や眼に疾患等がある方、近視の進行する10代などの若年者は手術を受けられません。

遠視や近視・乱視を矯正し、裸眼視力を向上させるための手術なので加齢により進行する老眼には有効ではないので注意してください。

PRKやラセックと呼ばれる手術はレーシック(LASIK)とは異なりますが、一般的には視力を矯正するための角膜屈折矯正手術をまとめて「レーシック」と呼んでいることが多いようです。

最近では「第3世代角膜屈折矯正手術」とも言われる、ReLEx®、ReLEx® smile といった方法の視力矯正手術も行われるようになっています。

角膜について

角膜の構造

角膜の構造

角膜は5つの層に分けられており、それぞれ表面(空気に近い層)から

  1. 角膜上皮
    角膜全体の厚さの約1/10を占めています。5から7層の角膜上皮細胞からなる多層扁平上皮になります。知覚神経のセンサーが多く分布しており、知覚神経は涙を出すのに大切なものです。
    この層は再生することができ、その周期は約1週間とされています。
  2. ボーマン膜
    非常に細いコラーゲン繊維が不規則に層状になっている厚さ7~14µmの薄い膜です。
    この層は再生することはできません。
  3. 角膜実質
    厚さは500µmであり、太さ20~30nmのコラーゲン繊維が整列してできた層です。
    コラーゲンのほかに少しムコ多糖を含み吸水性に優れています。
    この層は再生することはできますが、再生した部分は透明性が失われ混濁をおこします。
  4. デスメ膜
    角膜内皮の基底膜であり、厚さ5~10nmです。
    非常に丈夫で、加齢と共に肥厚していきます。
    この層は再生することができます。
  5. 角膜内皮
    厚さは約5µmであり、径が20µm位ある六角柱型の細胞がささえる単層立方上皮です。
    この層も再生することはできませんが、細胞の1つが壊れるとその周りの細胞が大きくなりその場所を修復します。

と呼ばれています。

その他のレーシック

イントラレーシック

イントラレーシックと一般的なレーシックとの違いはフラップの作成方法にあります。

通常のレーシックはマイクロケラトームという機器でフラップを作成しますが、イントラレーシックはイントラレースFSレーザーを用いて、コンピュータ制御によってフラップを作成します。
そのため、より安全で正確にフラップを作成することが可能となりました。

従来のレーシックにくらべてフラップをより薄く正確に作成することができるので、その分角膜実質層を削りとれる量が増え、通常のレーシックよりも強度の屈折異常(近視)を矯正することが可能です。

ウェーブフロント

ウェーブフロントとは角膜や水晶体の収差を解析する手法です。

収差とは、光がレンズを通る際にレンズ表面に凸凹がある場合や厚さに違いがある場合に、光の波長や通過する位置、角度の違いによって光の焦点がずれてしまいます。この“ずれ”を収差といいます。

収差の中には低次収差(眼鏡やコンタクトレンズで矯正できるもの)と高次収差(矯正できないもの)があります。

ウェーブフロントレーシックでは近視や遠視・乱視などについて総合的にウェーブフロントアナライザという解析装置で測定および分析します。その後、角膜形状解析を行ったデータをもとに、ウェーブフロントアナライザがガイドしてレーシック手術を行います。

角膜の形状異常に対しガイドのない従来のレーシックにくらべると、収差に対して解析をおこなっているので乱視の矯正については理論上では有利となります。

ただし全ての症例に有効というわけではなく、円錐角膜などの角膜形状異常には適応外となります。

またハードコンタクトでの乱視矯正には劣り、乱視の種類によっては乱視用眼鏡の矯正にすら劣る症例もあります。

アイレーシック

アイレーシックではイントラレースフェムトセカンドレーザーにより角膜内に切除面を形成します。
フラップの大きさや厚さなどがコンピューター制御でき、とても安全に理想的な形状のフラップを作成することができます。

最大1257ヶ所もの測定ポイントを直径7mmの瞳孔上に設置し、低次収差と高次収差を測定します。
測定したデータはフーリエ解析という独自の方法にて解析され、その後エキシマレーザーシステムに移してレーザー照射プログラムを作成し、角膜実質層を削ります。

リレックススマイル

ReLEx(リレックス)とはRefractive Lenticle Extractionの略で、角膜屈折矯正手術を意味します。
現在角膜屈折矯正手術の主流となっているLASIK(レーシック)とは異なる新しい手術技法で、ReLEx®smile(リレックスマイル)は第3世代の視力矯正手術とされています。
1,000兆分の1秒の最短バルスである次世代フェムトセカンドレーザーを用いて角膜内部の屈折率を調整し視力を矯正します。

レーシックの合併症

レーシックは角膜を手術するため、患者個人により違いがありますが、以下のような合併症が伴う場合があります。

  1. ドライアイ
    レーシックによる合併症で最も多いものです。人工涙液や涙点プラグなどが必要になる例もあります。
  2. 角膜の混濁
    角膜上皮の再生・治癒反応に伴い、ヘイズと呼ばれる角膜の混濁ができる可能性があります。
  3. 見え方
    手術前の屈折異常の強さにより、レーシック後に、ものが二重に見えたり、コントラスト(画像などの色、輝度の差を区別できる力)の低下、ハロ(暗い場所で光をみたときに光の周囲がにじんで見える症状)、グレア(光をまぶしく感じる症状)が現れる場合があります。
  4. 角膜感染症
    レーシックは角膜を手術するため感染症を引き起こす場合があります。
    発生頻度は5000例に1例程度とされています。

以下は、主な合併症ではないが起こりえるもの。

  • 術前より矯正視力が低下する
  • 過剰矯正および矯正不足
  • 視力に変動がある
  • ゴースト像が現れる
  • フラップのしわ
  • フラップの下の塵や腫瘍
  • フラップの穴
  • フラップのズレ
  • 照射のずれによる乱視
  • 角膜の拡張(エクタジア)
  • 上皮に侵食がおこる

表面照射系の角膜屈折矯正手術

ラセック(LASEK)

ラセック(LASEK)ではアルコール使用し、角膜上皮を柔らかくします。
その後、角膜上皮のみのフラップを作成し、エキシマレーザーを照射します。
こちらも裸眼視力を回復する屈折矯正手術の一つです。

ラセック(LASEK)のメリット

  • 角膜の薄い人にも行える。
  • 衝撃に強い為、激しい運動をする人に向いている。
  • フラップ作成によるトラブルがない。

ラセック(LASEK)のデメリット

  • 術後の痛みが強いため、しばらく治療用のコンタクトレンズを装用する。
  • 視力が安定するまでに時間がかかる。
  • ヘイズ(角膜の混濁)を作ることがある。
  • アルコールを使うので正確性の低下や角膜への負担がかかる。

エピレーシック

エピレーシックとはエピケラトームと呼ばれる機器を使用して約50マイクロメートルの角膜上皮のみのフラップを作り、エキシマレーザーを照射することによって近視・遠視・乱視を矯正するレーシックの一つです。

フラップはやがて剥がれ落ち、新しい角膜上皮が再生します。そのため通常のレーシックと異なり、眼に強い衝撃が加わってもフラップがずれることはありません。

PRKやラセックなどと同様に表面照射という術式に分類されます。他の表面照射系の屈折矯正手術と同様にボーマン膜をレーザーで除去し、角膜実質層を削ることで裸眼視力を回復させます。

エピレーシックのメリット

  • 眼に強い外力(衝撃)が加わってもフラップがずれたりすることはない。
  • PRKよりも視力の回復や安定が早い。
  • フラップを作るのに薬品を使用しないので、正確性の低下や角膜への負担等のリスクの心配が少ない。

エピレーシックのデメリット

  • 術後痛みがあるため、3~7日程度治療用のコンタクトレンズを装用する必要がある。
  • 表面照射系に分類されるのでヘイズ(角膜の混濁)が起こりやすい。
  • ハロやグレアの出現、コントラストの低下などの症状はレーシックと同様に出る可能性がある。

PRK

PRKはレーシック以前から行われてきた近視矯正手術法で、角膜表皮を除去した後に角膜にレーザーを照射し、角膜実質層の形を変えて、視力を矯正する手法です。
メスで角膜上皮を削り取るやり方が一般的でしたが、最近ではレーザーで角膜上皮を蒸散させてしまうようになりました。

PRKはフラップを作らないため、術後にフラップがズレてしまうということはありません。
格闘技などの激しいスポーツをされる方におすすめです。

PRKのメリット

  • 角膜がやや薄い方でも行える。
  • フラップを作らないため激しい運動にも対応できる。
  • レーシックよりも、技術的に容易で、安全性の高い術式である。

PRKのデメリット

  • 角膜上皮が再生により、術前より厚くなってしまうことがあり、低矯正になることがある。
  • 矯正制度はそこまで高くない。
  • 角膜上皮を一時的に完全に除去するため、術後に痛みが残る。
  • 視力が安定するまで1~2週間かかり、その間は保護用のコンタクトレンズの装用が必要になる。

レーシック全体のメリット・デメリット

メリット

  • 裸眼視力が向上する。

デメリット

  • 不可逆性である。
  • 角膜実質層を削るため、角膜が薄くなり強度が低下する。
  • それぞれ合併症がおこる。